不倫慰謝料を拒否、減額できるか知りたい

 

不倫の慰謝料請求をされたときに、下記の理由で、要求通りに支払いたくないケースがあるかと思います。

「請求理由に納得できないので、支払いを拒否したい」

「慰謝料の金額が自分がしたことに対して高額すぎるため減額したい」

「慰謝料が高額すぎて自分には支払えない」

不倫による慰謝料請求をされても、状況によっては支払いを拒否、減額できることがあります。本ページでは、慰謝料の支払いを拒否、減額できる可能性があるケースについて説明します。また、慰謝料を支払うことには納得したが、お金がなく慰謝料を支払えない場合の対応についても説明します。

 

拒否できる条件

相手と肉体関係がない

肉体関係が無い恋愛関係、例えばハグ、キスをするだけの関係である場合、不貞行為にならず慰謝料の支払いを拒否できる可能性が高いです。
ただし、交際が度を過ぎており夫婦の円満な関係を破壊したのであれば、慰謝料を支払う必要がある場合もあります。また、肉体関係があったかどうかは、証言だけではなく、メール内容やホテルに入った写真などで推察が行われます。

既婚者であることを知らなかった

相手が既婚者であることを知らなかった場合は、慰謝料の支払いを拒否できる可能性があります。
知らなかったというのは主観なので、不倫相手が「既婚者であることを知らなかった」と主張すれば、慰謝料請求はできないようにも思えます。しかし、生活場所や生活サイクル等を秘匿したまま長期間交際することは難しいので、交際期間が長くなればなるほど、既婚者であることを知らなかったと主張するのは難しくなります。

私自身も、裁判で、既婚者であると知らなかったと主張する方が相手方であったこともありますし、既婚者であると知らずに不倫行為をしてしまい慰謝料請求されていた事件を担当する場合もありますが、交際期間や交際中に会っていた場所や宿泊の有無や方法等の事情を総合的に考慮して、既婚者であることを知っていたかどうかは、判断されていました(もちろん、メール内容等について、客観的に明らかになる場合もあります。)。

相手の婚姻関係が破たんしていた

不倫が原因で婚姻生活が破綻したことを理由に慰謝料請求が行われるため、前提として、不倫前は婚姻生活が破綻していなかったことが必要となります。
そのため、不倫する前に既に長期間別居しているなど、婚姻関係が破綻していたと推察される場合には、慰謝料の支払いを拒否できる可能性があります。同様に、別居はしていないが、DVの被害を受けていた場合なども、すでに婚姻生活が破綻したといえるため、慰謝料の支払いを拒否できる可能性があります。

但し、離婚調停の申立てをしていたとしても、それだけで直ちに婚姻関係が破綻していたというわけではありませんので、離婚調停中であれば、不倫しても慰謝料請求されることはないと誤信されないよう、注意が必要となります。
また、不倫が発覚した後も夫婦が離婚していなからといって、不倫が原因で婚姻関係が破綻していないと即断されることもないと思います。

時効

不倫相手の配偶者、または配偶者が不倫の事実を知ってから3年経過した場合、慰謝料請求は時効となります。また、不倫の事実から20年経過した場合も時効となります。
ただし、不倫が離婚理由となった場合、離婚理由を作ったことに対して慰謝料を支払う義務は別に生じます。

証拠が不十分である

不倫慰謝料の請求は、不倫相手との肉体関係を示す証拠を相手が持っていないと成立しません。ただし、証拠は1つでは不十分でも、複数組み合わせることで不倫を実証できることもあります。
以下に挙げるのは、不倫の証拠になるものです。

現場の写真、動画
下記を写した写真や動画は肉体関係を示す証拠として扱われます。

  • 不倫相手とラブホテルに出入りしている場面
  • 不倫相手の家に何度も長時間出入りしている場面
  • 性行為の場面
不倫を自白した文書や録音

あなたや不倫相手が、肉体関係を認めた文書、または録音は証拠として扱われます。

探偵、興信所による報告書

相手が、探偵、興信所などに依頼した結果、不倫が行われているという結論となった場合、作成された報告書は証拠として扱われる可能性が高いです。

メール、LINE、通話履歴

肉体関係があったことがはっきりと分かる場合(行為の内容が書かれている場合、など)は有力な証拠となる可能性があります。
親密な内容でも肉体関係があったことが分からない場合、有力な証拠とは言えませんが、他の証拠と組み合わせることで不倫が実証されることもあります。

ホテル、交際のレシート

ラブホテルのレシート、カードの利用明細は、ある程度有力な証拠といえ、他の証拠と組み合わせて不倫を実証できる可能性があります。
食事のレシート、カードの利用明細は、有力な証拠とは言えませんが、他の証拠と組み合わせることで不倫が実証されることもあります。

支払いを拒否できない場合

下記のような理由では、支払いを拒否できない可能性が高いです。

相手から誘ってきた

自分は積極的ではなかったとしても、不倫の事実を作ってしまうと支払いを拒否できない可能性が高いです。

お金がないので慰謝料を支払えない

お金がないことは支払い拒否の理由にはならず、分割での支払いなどを求められるかと思います。

減額できる条件

減額できる条件

支払いを拒否できなくても、減額できるケースがあります。以下に挙げるのは、慰謝料を減額できる条件です。

 

相場に比べて高額な慰謝料を請求された

不倫慰謝料の相場は、後述する様々な条件により決まりますが、50~300万円あたりが相場となるかと思います。それよりも額が大きい場合には、慰謝料を減額できる可能性が高いです。

不倫相手が離婚、別居していない

不倫が原因で相手が離婚していない場合は、離婚した場合に比べれば、相手の婚姻生活への影響が小さいと判断され、慰謝料が減額される可能性があります。
また、不倫が原因で相手が別居していない場合も同様に、慰謝料が減額される可能性があります。

結婚期間が短い

相手の結婚年数が短い場合は、長い場合に比べれば、相手に与えた精神的苦痛は小さいと判断され、慰謝料が減額される可能性があります。

不倫の期間が短い、不貞行為の回数が少ない

不倫の期間が短い場合は、不倫の期間が長い場合に比べれば、相手の婚姻生活への影響が小さいと判断され、慰謝料が減額される可能性があります。
不貞行為の回数が少ない場合も、同様に慰謝料が減額される可能性があります。

収入・資産が少ない

収入・資産が少ないからといって支払いを免れることはできません。しかし、責任を取り慰謝料を支払う上で、収入・資産が少ないことが考慮され、慰謝料が減額される可能性があります。
また、収入・資産が少ない場合は、慰謝料の分割支払いが認められることもあります(双方の合意が必要ですので、裁判まで進んでしまい、判決が出る段階ではできませんので、ご注意下さい。)
なお、逆に収入・資産が多い場合、低額の慰謝料では罰則にならないので慰謝料が増額となる可能性があります。

不倫相手の配偶者から、自分にだけ慰謝料請求が行われた(求償権)

不倫相手の配偶者から、不倫相手には慰謝料請求が行われず、あなたにだけ慰謝料請求が行われた場合は、慰謝料支払い後に、原則2分の1を不倫相手に求償する権利があります。その求償権と引き換えに慰謝料の減額を交渉することができます。

既婚者同士の不倫(W不倫)

既婚者同士の不倫(W不倫)では、慰謝料請求をしても、相手方からも請求される可能性があるため、経済的利益が得られない場合があります。その場合は、慰謝料請求の取り下げ、減額を交渉できる可能性があります。
 

慰謝料が増額される場合

下記のケースでは逆に慰謝料が増額される可能性が高いです。

  • 前回不倫したときの誓約違反
    以前に一度不倫を行い、不倫相手と連絡を取らない誓約、二度と不倫をしない誓約をしていたにもかかわらず、その制約を破り、再度不倫をしてしまった場合には、慰謝料が増額される可能性があります。
    また、誓約書に慰謝料の金額について記載がある場合は、それも考慮される可能性があります。
  • 謝罪、反省がない
    不倫をしたことに対して謝罪、反省がない場合には、慰謝料が増額される可能性があります。
  • 不倫相手との子供を妊娠、出産
    不倫相手との子供を妊娠、出産するということは、相手への精神的な損害が大きいと考えられるため、慰謝料が増額される可能性があります。
  • 夫婦に子供がいる
    夫婦に子供がいる場合は、相手への精神的な損害が大きいと考えられるため、慰謝料が増額される可能性があります。ただし、子供にも精神的な損害はあるかと思いますが、原則的に子供から慰謝料請求を行うことはできません。
  • 病気に追い込んでしまった
    不倫による精神的損害により、相手がうつ病などの病気を発症した場合は、慰謝料が増額される可能性があります。病気を発症した証拠として医師の診断書が必要となります。
  • 不倫相手に比べ大きく年上である
    不倫相手に比べ大きく年上である場合は、不倫関係を主導したと判断され、慰謝料が増額される可能性があります。

お金がなく支払えない場合

支払いを拒否できず、減額しても支払いができない場合の対応は、以下のようになるかと思います。なお、慰謝料を用意するために節約をすることは前提となります。

 

分割払いにしてもらう

貯金、資産がなく、一括払いが難しいことを説明し、請求者の合意が得られれば慰謝料を分割払いにできます。相手の合意を得るためには、お金がないから払えないという開き直った態度ではなく、心からの謝罪を行う必要があります。また、すでに裁判まで進み、判決が出る段階で合意を得ることはできませんのでご注意下さい。
分割払いを滞納した場合に、請求者が強制執行を行えるよう、その旨を記載した公正証書の作成を求められることがあります。

慰謝料拒否、減額の流れ

慰謝料減額の流れ

不倫慰謝料を請求されたが拒否、減額する場合の流れについて説明します。

1.請求書(内容証明・訴状)が届く

「○○以内に、下記代理人弁護士名義の口座に振込みください」と記載されていることがほとんどだと思います。この段階で、記載どおりに振り込まないとすぐに財産が差し押さえられるとか、逮捕されてしまうとかいう心配はありません。但し、無視していると、裁判が提起される可能性が高いですので、期間内に、対応や方針を協議することをお勧めします。

2.支払い交渉(拒否、減額も交渉)

不倫慰謝料の支払いについて交渉を行います。合意できれば、内容を書面にし、支払いを行って交渉完了となります。また、慰謝料以外に二度と不倫をしない誓約、離婚などを要求される場合があります。

不倫慰謝料を請求されたからといって、必ず慰謝料を支払わなければならないわけではありません。また、慰謝料の支払いを拒否できない場合でも、減額できる場合があります。前述した条件を踏まえ、慰謝料支払いの拒否、減額交渉を行います。

3.裁判を提起される(訴状を受け取る)

交渉で合意できなかった場合、裁判を提起される可能性があります。通常、慰謝料請求で裁判を起こされてしまうと、特別送達という方法で訴状が郵送されます。本人がご不在のときは持ち帰られて郵便局で一定期間保管されます。無視して訴状を受け取らないと、相手の言い分どおりの判決が出てしまう可能性がありますので、受け取るようにしましょう。

4.裁判の流れ

訴状と一緒に第1回目の裁判期日が記載した書類が同封されております。第1回期日に、裁判所に一切連絡することはなく、欠席すると、その場で相手方の請求どおりの判決が出てしまう可能性が高いので、ご注意下さい。弁護士に依頼すれば、裁判に毎回出席する必要は原則ありません。但し、裁判の終盤に当事者双方を尋問することが多く、その場合には、裁判所に出席する必要があります(尋問では、争いになっている部分を中心に、言い分がどれほど信用できるかを検討することになります。)。

裁判は大体1か月程度に1回開催されるのが通常です。裁判は、通常10か月~1年程度でかかります。

裁判になっていても、双方の主張・立証がある程度出た段階で、和解について協議されるのが通常です。その際に、請求額を減額したり、支払いを分割にしたり、不貞相手との接触を禁止したり、求償権を放棄するなどの和解条件が協議され、協議が整えば、裁判所による判決ではなく、裁判上の和解により裁判が終了します。

 

不倫問題を当事務所に相談

不倫慰謝料の問題でお悩みでしたら、弁護士にご相談ください。

  • 弁護士が依頼者様に代わり交渉
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法律問題の最適な解決方法は、ケースごとに全く異なります。東京アライズ法律事務所は、依頼者様と弁護士が対話を通じて、『最善の解決イメージ』を共有しながら動くことを心掛けています。

投稿者プロフィール

吉川 樹士
吉川 樹士弁護士
弁護士。東京アライズ法律事務所所属。著作に「3訂 終活にまつわる法律相談 遺言・相続・相続税」、「相続実務が変わる!相続法改正ガイドブック」など。モットーは依頼者様と弁護士が対話を通じて、『最善の解決イメージ』を共有すること。