内縁中の不倫のリスク

「内縁のパートナーに不倫をされた」

「内縁のパートナーに不倫がバレてしまった」

「内縁関係の不倫のリスクを知りたい」

などのお悩みを持つ方向けの記事です。法律的な内容を中心に目次に沿って説明します。
 

内縁とは何か?

内縁とは何か?

内縁とは事実婚とも呼ばれるもので、いわゆる法律婚との違いは、婚姻の届け出の有無だけです。法律婚との大きな違いは、夫婦が別姓のままでいられることでしょう。

夫婦別姓のメリットとしては、銀行口座や免許、資格などの名義変更手続きをしなくて済むことが挙げられます。さらに、それほど親しくない人に対して結婚の事実をさらさないで済むという点も、内縁関係を選ぶポイントになります。

なお、法律婚と比較して、内縁が不利になる場合もあります。内縁であれば、税法上パートナーの扶養に入ることはできません。例えば、所得税の配偶者特別控除(妻の給与所得が150万円以下の場合に夫が38万円の所得控除が受けられる、など)、相続税の配偶者税額軽減(配偶者の相続は、法定相続分または1億6000万円まで相続税が課税されない)、などが受けられないことになります。

ただし、社会保険上の扶養には入ることができます。つまり、国民年金の第3号被保険者になること、会社の健康保険の扶養に入ること、などはできます。

また、事実婚は相続に関して不利になりやすいという一面もあります。突然パートナーが死亡した際に、婚姻届け出がない内縁関係であると、法定相続人になることができません。そのため、自分の死後パートナーが困らないように、遺言や生前贈与といった対策をしている内縁の夫婦もいます。

なお、「内縁」と「事実婚」は同義語としても用いられますが、「事実婚」を当事者間の主体的な意思で婚姻届を出さない場合、「内縁」をそうでない場合と区別する場合もあります。

 

内縁と同棲との違いは?

内縁と同棲との違いは?

内縁と同棲との違いにも注目しましょう。同棲とは結婚をしていない男女が同居していることを指します。内縁では国民年金の第3号被保険者になること、会社の健康保険の扶養に入ること、内縁関係解消時の財産分与、などが認められますが、同棲ではそのような権利は認められません。

内縁関係が破綻する際に、内縁か同棲かの判断でもめる場合があります。判断においては、お互いに婚姻の意思があり、生計を共にしているかどうかが重視されます。片方に婚姻の意思があったとしても、もう片方が単なる同棲であると捉えていては、内縁関係と認められないので注意しましょう。

以下に挙げるのは、内縁関係の裏付けとなる可能性が高いものです。

  • 住民票の続柄が「妻(未届)」などになっている
  • 住宅の賃貸契約の続柄が「妻(未届)」などになっている
  • 会社の健康保険で扶養に入っている

内縁関係(事実婚)であることを確実にしておきたい場合は、役所で住民票の世帯主との続柄に「夫(未届)」または「妻(未届)」と記載する手続きを行います。

 

内縁時に不倫をしてしまうきっかけは?

内縁時に不倫をしてしまうきっかけは?

不倫をしてしまうきっかけは、法律婚と内縁でほぼ同じと言ってよいでしょう。職場で出会った人、SNSで共通の趣味などを通じて知り合った人、同窓会で再会したなどのきっかけを通じて不倫が始まります。中には、内縁のパートナーがいても、積極的に浮気相手を探す不届きな人もいるでしょう。

内縁と同棲の違いをよく理解していないために、不倫を法律違反とは思わないことも一因になっているかと思います。

また、不倫相手が内縁のパートナーの存在を知らない可能性も、考慮に入れておきましょう。内縁のパートナーの存在を想像できなかったり、すでに内縁関係が破綻していると嘘をつかれていたりする場合があります。

 

内縁時の不倫がバレた場合のリスクは?

内縁時の不倫がバレた場合のリスクは?

内縁時の不倫がバレた場合のリスクについて説明します。内縁といえども法律婚と同等の権利が認められている部分もあり、親族や親しい人からは法律婚と同じように認識されていることが多いでしょう。

法律婚と同じように、内縁時の不倫も不法行為にあたります。同棲中の浮気とは異なり、内縁時の不倫には相当のリスクが発生することを確認しておきましょう。

慰謝料の発生

内縁中の不倫でも、法律婚と同じように慰謝料が発生します。慰謝料の相場としては法律婚とほぼ変わらず、内縁関係が破綻する場合に離婚と同等の慰謝料を支払った事例もあります。

ただし、慰謝料を請求するには内縁関係であることを証明せねばならず、周囲の人の証言や、内縁関係を示す書類などが必要です。

特に、内縁関係をオープンにしていない場合は、周囲からの証言を得られない分、書類の有無がポイントになります。

以下に挙げるのは、内縁関係を示す書類になります。

  • 住民票の続柄が「妻(未届)」などになっている
  • 住宅の賃貸契約の続柄が「妻(未届)」などになっている
  • 会社の健康保険で扶養に入っている

不倫慰謝料は不倫された側が、パートナー、パートナーの不倫相手のどちらか一方、または片方に請求することができます。

不倫慰謝料の請求先

ただし、パートナーではなく不倫相手に慰謝料を請求する場合は、不倫相手があなたとパートナーが内縁関係にあることを知っていた必要があります。

社会的信用の失墜

不倫の結果、パートナーからの信用を損なうだけでは済まない場合があります。親族、ときには友人からも見放され、本人が内縁関係を修復したくても周りが許さない場合もあるでしょう。

また、社内不倫で不倫相手が同じ部署だった場合は、職場の人たちに関係を知られて仕事がやりにくくなる可能性があります。

不倫で裁判になった場合、職を失うことは基本的にはありません。不倫は違法ですが、責任を負うのは内縁関係にあるパートナーに対してであり、会社に対してではないからです。

しかし、不倫により他の問題を起こしていないかということが重要になります。勤務時間中にデートを重ねて業務を怠っていれば問題となりますし、密会のために経費を流用していたとなれば業務上横領となります。また、パートナーが乗り込んできて業務妨害になっていれば問題となります。

そうした要因を押さえて、会社から自主退社を促すことも多いようです。また、人事異動の対象とすることがあるようです。

 

不倫発覚後に内縁関係を修復する場合に注意することは?

不倫発覚後に内縁関係を修復する場合に注意することは?

不倫が発覚したあとでも、経済的な不安や子どもへの影響を考慮して、内縁関係を続けることを希望する夫婦もいるでしょう。

夫婦の今後のために、不倫相手も交えて当事者間で示談書を作成しておくことが効果的です。

示談書では金輪際不倫をしないことを誓約し、もし違反した場合には違約金を支払うことを明記しておきましょう。この示談書があれば、残念ながら再び不倫が発覚した場合にも、違約金や内縁解消にむけて話を進めやすくなります。

また、不倫をした側は、当然内縁のパートナーから厳しい監視の目を向けられるでしょう。たとえば、居場所を把握するためにGPSで監視されたり、スケジュールを細かく確認されるといった例が挙げられます。これまでの内縁関係が円満であったとしても、すぐに信頼を取り戻せないことを肝に銘じておきましょう。

 

不倫発覚後に内縁関係を解消する場合の手続きは?

不倫発覚後に内縁関係を解消する場合の手続きは?

不倫発覚後に内縁関係を解消したいと望む夫婦もいます。内縁関係では婚姻の届け出を提出していないため、関係解消には特に手続きがいりません。同居を解消すれば、それだけで関係は終了します。

法律婚をしている夫婦は別居という選択肢もあり、その際には婚姻費用の支払いが発生します。しかし、内縁の場合は別居の時点で内縁関係が終了し、婚姻費用も発生しないこととなります。

法律婚と同じように、内縁関係の相手に財産分与を請求できます。また正当な理由のない内縁関係の解消に対しては慰謝料を請求することもできます。当事者間で話を進められなければ、裁判所に申立てをすることも可能です。
なお、内縁関係解消の正当な理由は、以下の民法770条1項各号に定められた離婚の正当な理由と同じになります。

1.不貞行為
2.悪意の遺棄
3.配偶者の生死が3年以上明らかでない
4.配偶者が強度に精神病にかかり、回復の見込みがない
5.その他婚姻を継続し難い重大な事由

 

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法律問題の最適な解決方法は、ケースごとに全く異なります。東京アライズ法律事務所は、依頼者様と弁護士が対話を通じて、『最善の解決イメージ』を共有しながら動くことを心掛けています。

投稿者プロフィール

吉川 樹士
吉川 樹士弁護士
弁護士。東京アライズ法律事務所所属。著作に「3訂 終活にまつわる法律相談 遺言・相続・相続税」、「相続実務が変わる!相続法改正ガイドブック」など。モットーは依頼者様と弁護士が対話を通じて、『最善の解決イメージ』を共有すること。