社内不倫のリスク。退職要求はできるか?
「社内不倫をしていることがバレてしまったがどうすればいいか。」
「不倫がバレてしまったが会社から退職要求されるだろうか。」
「社内不倫にはどんなリスクがあるのか知りたい。」
などのお悩みをお持ちの方向けの記事です。逆に配偶者が社内不倫をしており、
「配偶者が社内不倫をしていることが分かった。どんな対応がとれるか。」
「配偶者が社内不倫しているが、不倫相手に退職要求できるだろうか。」
などのお悩みをお持ちの方にも役に立つ記事かと思います。 以下の目次に沿って説明します。
社内不倫が始まるきっかけ
不倫相手と出会うきっかけとして一番多いのは、職場と言われています。
同僚と仕事に共に取り組む中で親密になり、同僚から恋人に発展することはよくあることです。以下に挙げるようなことが、恋人になるきっかけになるのかと思います。
- 仕事で長時間一緒に過ごすこと
- 仕事の相談をする、されること
- 同僚、上司・部下の信頼感
- 仕事終わりの食事や飲み会
恋人になった二人がお互い未婚同士であれば問題ありません。しかし、既婚者であった場合には、不倫となり違法な行為となってしまいます。
社内不倫がバレるきっかけ
自分と不倫相手の両方を知っている同僚は、不倫に気づきやすいものです。また、いつも一緒に過ごしている家族には、ふとしたきっかけから不倫がバレてしまうものです。以下に挙げるのは、社内不倫がバレてしまうきっかけです。
他の社員と態度が違う
不倫相手は恋人であり、本人にとって特別な存在でしょう。そのため、他の社員とは違う態度で接してしまい、不倫関係を疑われてしまう可能性があります。また、本人はそう思わなくても、無意識に違う態度をとってしまう可能性もあります。
同僚によっては、証拠がなくても親しげな態度から不倫を疑い、社内で噂を広げてしまうかもしれません。そうなってしまうと、不倫を隠すことは難しくなるかと思います。
同じ日に有給休暇を取得
既婚者が不倫相手と休日にデートするのは、家族のことを考えると難しいものです。そのため、有休休暇を使う傾向があります。
しかし、不倫相手と同じ日に休暇をとることが多いと、同僚に不倫を疑われる可能性が高くなります。
携帯電話を見られる
不倫相手との連絡には携帯電話を使うかと思います。そして、電話やメール、チャットアプリなどで連絡を取ると必ず履歴が残ります。そのため、家族に携帯電話を見られると、それまでの不倫相手との秘密のやりとりが発覚する可能性があります。はっきりと不倫関係を示している履歴の場合は、慰謝料請求などに使用できる証拠となってしまいます。
また、家でケータイをいじる時間が増えた、頻繁に履歴を削除している、ことなどから不倫を怪しまれることもあります。
社内不倫がバレたときのリスク
夫婦には貞操権があるので、不倫は夫婦の権利を侵害する違法行為となります。したがって、社内不倫がバレたときには、被害者から慰謝料請求、離婚請求が行われます。
また、プライベートである一方で、社内の人間の違法行為であることを考えると、会社も何らかの懲戒を行う可能性があります。以下に挙げるのは、社内不倫がバレたときのリスクです。
慰謝料請求
夫婦には貞操権があり、不倫により貞操権を侵害された場合は慰謝料を請求することができます。慰謝料を請求できる対象は、配偶者の不倫相手、または配偶者となります。
不倫慰謝料の相場は、結婚期間、不倫期間、不貞行為の回数、収入、資産、などにより決まりますが、50~300万円あたりが相場となるかと思います。
上図のように、不倫の当事者がどちらも既婚者の場合をW不倫と言います。この場合は以下の流れとなり、どちらの夫婦も実質的に慰謝料を獲得できない可能性があります。
①.A妻がB妻に慰謝料を請求する
②.B夫妻に共同の費用負担が生じる
③.B夫がA夫に慰謝料を請求する
④.A夫妻に共同の費用負担が生じる。①で得た慰謝料請求が打ち消される。
ただし、不倫による慰謝料請求は支払う必要がないケースがあります。以下に挙げるのは、慰謝料を拒否できる条件です。
相手と肉体関係がない
肉体関係が無い恋愛関係、例えばハグ、キスをするだけの関係である場合、不貞行為にならず慰謝料の支払いを拒否できる可能性が高いです。
ただし、交際が度を過ぎており夫婦の円満な関係を破壊したのであれば、慰謝料を支払う必要がある場合もあります。また、肉体関係があったかどうかは、証言だけではなく、メール内容やホテルに入った写真などで推察が行われます。
既婚者であることを知らなかった
相手が既婚者であることを知らなかった場合は、慰謝料の支払いを拒否できる可能性があります。
知らなかったというのは主観なので、不倫相手が「既婚者であることを知らなかった」と言えば、慰謝料請求はできないようにも思えます。しかし、生活場所や生活サイクル等を秘匿したまま長期間交際することは難しいので、交際期間が長くなればなるほど、既婚者であることを知らなかったと主張するのは難しくなります。
婚姻関係が破たんしていた
不倫が原因で婚姻生活が破綻したことを理由に慰謝料請求が行われるため、前提として、不倫前は婚姻生活が破綻していなかったことが必要となります。
そのため、不倫する前に既に長期間別居しているなど、婚姻関係が破綻していたと推察される場合には、慰謝料の支払いを拒否できる可能性があります。同様に、別居はしていないが、DVの被害を受けていた場合なども、すでに婚姻生活が破綻していたといえるため、慰謝料の支払いを拒否できる可能性があります。
時効
不倫相手の配偶者、または配偶者が不倫の事実を知ってから3年経過した場合、慰謝料請求は時効となります。また、不倫の事実から20年経過した場合も時効となります。
ただし、不倫が離婚理由となった場合、離婚理由を作ったことに対して慰謝料を支払う義務は別に生じます。
証拠が不十分である
不倫慰謝料の請求は、以下に挙げるような肉体関係を示す証拠を相手が持っていないと成立しません。
- 不倫相手とラブホテルに出入りしている場面の写真、動画
- 不倫相手の家に何度も長時間出入りしている場面の写真、動画
- 性行為の場面の写真、動画
- 不倫を自白した文書や録音
- 探偵、興信所による報告書
- 肉体関係があったことがはっきりと分かるメール、LINE
- ラブホテルのレシート、カードの利用明細
なお、不倫の証拠は、それ1つでは不十分でも、いくつかを組み合わせることにより、不倫の証拠とできることもあります。
離婚要求
不倫をされた側は離婚をする権利があります。不倫は民法770条1項各号の離婚理由であるため、夫婦の合意がなくても、一方的に離婚をすることができます。
(参考)民法770条1項各号の離婚理由
1.不貞行為
2.悪意の遺棄
3.配偶者の生死が3年以上明らかでない
4.配偶者が強度に精神病にかかり、回復の見込みがない
5.その他婚姻を継続し難い重大な事由
不倫をした側は離婚したくなくても、パートナーが離婚したいと望む場合、離婚を受け入れるしかありません。離婚を避けるためには、不倫相手と二度と連絡しない旨の誓約書を書くなどし、パートナーの離婚の意志を変える必要があります。
なお、以下の離婚条件については、不倫により離婚するからといって不利になるわけではありません。
- 財産分与
- 親権
- 養育費
- 面会交流
同じ職場で働きにくくなる
社内不倫がバレてしまった後も、当事者同士が同じ職場で働き続けると、職場の同僚から冷たい目で見られるかと思います。そのため、当事者から、異動、退職を希望せざるを得なくなるかもしれません。
また、会社から、不倫の当事者同士が同じ職場で働き続けることは、職場に悪影響を与えると判断される可能性があります。会社が取れる対策については次で説明します。
会社は、不倫を理由に退職要求できる?
「1日36万円のかばん持ち」(ダイヤモンド社)の著書である小山昇さんも「社内不倫を一掃したら、経常利益が400倍に」と記載しているように、不倫が与える影響は会社としても大きいと思われます。
不倫が社内に発覚した後で、当事者同士が変わらず同じ職場で働き続けるのは、職場からのクレームなども考えると、会社としては避けたいものです。
しかし、社員が社内不倫をしていたことを理由に、会社として「退職要求」を社員に行うことは原則できません。
法的に不倫は違法ですが、責任を負うのは不倫相手の配偶者に対してであり、会社に対してではありません。
また、就業規則により懲戒解雇を行うためには、相当の理由が必要になりますが、不倫を行い仕事に悪い影響を及ぼした、職場の雰囲気が悪くなった程度では、その要件を満たせないと思われます。
会社が取れる対策は?
不倫により他の問題を起こしていないかということが重要になります。勤務時間中にデートを重ねて業務を怠っていれば問題となりますし、密会のために経費を流用していたとなれば業務上横領となります。また、配偶者が会社に乗り込んできて業務妨害になっていれば問題となります。
そうした要因を押さえて、会社から自主退社を促すことも多いようです。また、人事異動の対象とすることがあるようです。
ただし、大きな会社であれば、当事者を別々の部署に異動できますが、中小企業だと規模の観点から難しいかもしれません。
社外不倫について
同じ職場ではなく、取引先や顧客など、仕事で関わる社外の人間との不倫もあります。不倫していることは問題ですが、社外の人間ということもあり、会社は関わらないケースが多いようです。ただし不倫のせいで取引先に損害を与えた、イメージを損なったなどの事態が起これば、双方の会社を巻き込んで問題になる可能性もあります。
配偶者は、不倫相手に退職要求できる?
自分の配偶者と不倫相手が、不倫発覚後も同じ職場で働いている。これは不倫された身としては許しがたいことでしょう。特に不倫発覚後も婚姻関係を続けていくのなら、不倫相手に会社を辞めてほしいと思う気持ちは分かります。
しかし、退職はあくまで会社と本人の関係によって決まりますので、そこに第三者が関わることは、不倫の被害者であってもできません。
穏便に退職してくれるよう不倫相手にお願いする、ということなら可能ですが、法律的には強制的に不倫相手を退職させることはできません。執拗に退職を要求すると、脅迫に該当することもありますので注意が必要です。
配偶者が取れる対策は?
「もう不倫はしない」と口で約束するだけでは安心できない、同じ職場では不倫が再発する恐れがある。そんなときに取るべき手段として挙げられるのが示談書や誓約書です。不倫を再び起こさないためには、不倫をした男女と配偶者で話し合いを行うことになりますが、その話し合いで決まったことを記録しておくのがこの示談書や誓約書になります。
不倫関係があった事実と、再度不倫関係に陥らないこと、職務を行う上で私的接触をしないこと、などを記載します。また、違反した場合の慰謝料の金額を記載することも重要です。
口頭ではなく書面として残すことで「また不倫関係になってしまったらお金を払わないといけない」と相手に意識させることになり、再発の抑止力となります。また万が一不倫が再発した場合に、誓約書があるにもかかわらず再度不倫を実施したという重い法的責任を負わせることができます。
その他、配偶者は以下の要求を行うことが可能です。
- 不倫慰謝料請求
配偶者、および配偶者の不倫相手に慰謝料を請求することができます。 - 離婚
配偶者の不倫は離婚裁判になった場合に、離婚事由として認められます。 - 謝罪文
怒りが収まらない場合、不倫をしたことに対する謝罪文を要求することもできます。
社内不倫がバレたときの対応方法
それでは、社内不倫がバレてしまった場合にはどうすればいいでしょうか。関係者に迷惑をかけていることは事実であるため、誠心誠意対応することが大切です。以下に対応方法を挙げます。
不倫関係を解消する
家族から不倫関係の解消を迫られる、職場内に不倫の事実が広まっていく、職場の同僚から冷たい目で見られる、などの状況で不倫関係を継続することはできないと思いますので、まずは不倫関係を解消することになるかと思います。
穏便に不倫関係が解消できればいいですが、もめてしまうケースもあります。その場合は、弁護士に相談するのも一つの手かと思います。
弁護士に相談する
慰謝料請求、離婚要求、会社からの不当な要求、穏便な不倫関係解消、など解決しなければならない問題が山積みとなります。自分で解決できない場合は、弁護士に相談するのが良いかと思います。弁護士費用はかかりますが、あなたに代わり問題を解決してくれます。
不倫問題を当事務所に相談
不倫慰謝料の問題でお悩みでしたら、弁護士にご相談ください。
- 弁護士が依頼者様に代わり交渉
- 家族や職場に知られるリスクを下げる
- 24時間受付のスピード対応
法律問題の最適な解決方法は、ケースごとに全く異なります。東京アライズ法律事務所は、依頼者様と弁護士が対話を通じて、『最善の解決イメージ』を共有しながら動くことを心掛けています。
投稿者プロフィール

- 弁護士
- 弁護士。東京アライズ法律事務所所属。著作に「3訂 終活にまつわる法律相談 遺言・相続・相続税」、「相続実務が変わる!相続法改正ガイドブック」など。モットーは依頼者様と弁護士が対話を通じて、『最善の解決イメージ』を共有すること。
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