不倫の手切れ金について

「不倫相手と別れる際に手切れ金を要求されたが支払うべきか」

「高額な手切れ金を要求され、支払わないと家族や職場に関係をばらすと言われた」

「手切れ金の要求を無視し一方的に別れたところ、嫌がらせを受けている」

「不倫相手と別れるにあたり手切れ金を要求したが無視された」

というお悩みをお持ちの方向けの記事です。手切れ金だけでなく、関係者のお気持ちへの配慮などが重要かと思いますが、本ページでは手切れ金の法律的な扱いを中心に説明いたします。

 

手切れ金の法律的な扱い

手切れ金の法律的な扱い

法的に手切れ金請求の権利はない

的に手切れ金請求の権利はない

上図のような関係にて、Aさんが不倫相手と関係を清算しようとし、不倫相手がAさんに対して傷ついた、捨てられたなどの被害者意識を感じたとします。このとき、不倫相手がAさんに手切れ金を請求する法的な権利はあるのでしょうか?

不倫相手がAさんに手切れ金を請求する法律的な権利はありません。不倫相手はAさんに対して傷ついた、捨てられたなどの被害者意識を感じるかとは思いますが、法律的には被害者として扱われません。

それどころか、逆にAさん夫婦の貞操権を侵害した加害者の立場となります。

自主的に手切れ金を支払うことに問題はない

手切れ金を請求する法的な権利がないとはいっても、手切れ金・慰謝料を支払うことで、お互いの気持ちを整理することができるかもしれません。また、Aさんは不倫相手に、勝手ながら不倫関係を清算するという後ろめたさがあるかもしれません。

あるいは、配偶者が不倫について知らない場合は、手切れ金を支払うことと引き換えに、不倫相手が配偶者に不倫の事実を話さないことを約束したいと、Aさんが考える可能性があります。また、不倫相手との関係を手切れ金を支払うことで、後々に引きずらない形で清算しようと考えるかもしれません。

そういった様々な事情を考慮し、自主的に手切れ金を支払うことに問題はありません。

別件で慰謝料が発生する可能性もある

ただし、別件でAさんから不倫相手に慰謝料を支払う義務が生じる可能性はあります。

まず、結婚していないなどの嘘をついて交際していた場合は貞操権の侵害となり慰謝料が生じる可能性があります。

また、Aさんが不倫相手の話し合いの中で、手切れ金を支払う旨の合意書に署名、捺印すると、法律的に義務はなくても支払いの義務が生じます。

Aさんとしては一方的に別れを切り出すことになり、弱い立場にあるかもしれませんが、合意書は十分に確認した上で署名、捺印を行うようにしてください。

特に、相場より非常に大きい手切れ金を要求されているのに、合意書に署名、捺印を行ってしまうと、後のトラブル発生の原因となります。できれば一度持ち帰り、弁護士などに相談を行い、署名、捺印を行うかどうか検討してください。

配偶者は法的に慰謝料請求を行う権利がある

配偶者は法的に慰謝料請求を行う権利がある

一方、Aさんが配偶者以外の異性と不倫をした場合に、夫婦には貞操義務があるため、配偶者は不倫相手に法的に慰謝料を請求する権利があります。

これは、不倫相手が配偶者に不倫についてバラすことのデメリットとなります。

 

手切れ金の相場

手切れ金の相場

手切れ金の相場ですが、法律的に支払う義務がなく判例がないため、判例と比較して決めることができません。そのため、不倫期間の長さ、お互いの収入、妊娠・中絶の有無などの客観的な指標の他に、お互いの気持ちというものが大きな要因となることが多いです。

目安としては10万円~300万円となります。
不倫関係を解消した後に、接触することはできるだけ避けた方がいいことから、分割払いではなく一括払いとした方が良いかと思います。

状況別、手切れ金問題の流れ

状況別、手切れ金問題の流れ

状況別に、手切れ金問題の流れについて説明します。以下がポイントになります。不倫相手とは関係を解消し、離婚はしない前提とします。

  • 配偶者に不倫がバレているか
  • 離婚するかしないか

配偶者に不倫がバレていない場合

配偶者に不倫はバレておらず、バレないうちに不倫関係を清算しようとしたところ、不倫相手から手切れ金を要求されたという状況です。

不倫相手から手切れ金を要求された

手切れ金を支払うことと引き換えに、不倫関係を解消することに合意した場合は、解決となります。

手切れ金を支払うことと引き換えに、不倫関係を解消することに合意した

法的には、不倫相手に手切れ金を請求する権利はないため、Aさんには手切れ金を支払わない選択肢もあります。

手切れ金を支払わない

手切れ金を支払わなかった場合に、お互いに納得し不倫関係を解消できれば問題ありません。

不倫相手は納得できずに、以下のような行動に出る、または行動に出るとほのめかす可能性があります。

  • 配偶者に不倫の事実をバラす
  • 社内不倫の関係であれば、職場に不倫の事実をバラす
  • Aさんに嫌がらせを行う

配偶者に不倫の事実をバラす
配偶者に不倫の事実をバラすことは、Aさんとしても避けたいことではありますが、不倫相手にとっても良いことではありません。

配偶者は、不倫相手がAさん夫婦の貞操義務を侵害したことを理由に、不倫相手に慰謝料を請求することができるからです。

職場に不倫の事実をバラす
職場に不倫の事実をバラすことは、Aさんとしては仕事に悪い影響を及ぼしたり、職場の雰囲気が悪くなるので避けたいことです。

ただし、社内不倫をしていたことを理由に、会社が懲戒解雇を行うことはできないかと思います(不倫により他の問題を起こしていれば別です)。

嫌がらせを行う
嫌がらせについては、限度を超えていると「ストーカー行為」となり、『ストーカー規制法』に違反する犯罪行為となります。ストーカー行為については、「手切れ金を支払う側、要求する側の注意点」にて後述します。

 

配偶者に不倫がバレている場合

配偶者に不倫がバレている、または不倫相手によりバラされてしまっており、不倫関係を清算しようとしたところ、不倫相手から手切れ金を要求されたという状況です。

不倫相手から手切れ金を要求された

配偶者はAさんと家計が同じであるため、配偶者はAさんに手切れ金を支払わないように要求する可能性が高いです。

また、夫婦関係を侵害された配偶者は、不倫相手に慰謝料を請求します。

配偶者はAさんに手切れ金を支払わないように要求する。夫婦関係を侵害された配偶者は、不倫相手に慰謝料を請求する。

もし手切れ金を渡すとすると、Aさんは配偶者に秘密で渡すことになるかと思います。

 

手切れ金を支払う側、要求する側の注意点

手切れ金を支払う側、要求する側の注意点

支払う側の注意点

後々のトラブルを避けるために、合意書を作成することが重要です。「職場や家族にばらさない旨」、「これ以上の請求は行わないこと」などを記載します。

法律的に有効で、将来覆されない合意書を作成するために、できれば、書面作成の専門家である弁護士、行政書士に依頼して作成を行うのが良いかと思います。

支払う側(支払わない場合)の注意点

法律的に手切れ金を支払う義務はありませんが、お気持ちへの配慮などが重要かと思います。

不倫相手と職場が同じ場合、近所に住んでいる場合は、今後も仕事上の付き合い、ご近所付き合いがありますので、特にお気持ちへの配慮が重要になります。

不倫相手に職場や家族に関係をバラすと言われ、執拗に手切れ金を要求された場合などは、脅迫に該当する可能性がありますので、弁護士にご相談ください。

また、限度を超えた嫌がらせは「ストーカー行為」となり犯罪行為ですので、弁護士や警察にご相談ください。

「ストーカー行為」は、身体の安全、住居等の平穏若しくは名誉が害され、又は行動の自由が著しく害される不安を覚えさせるような方法により、以下に示す「つきまとい等」の行為を繰り返すことと規定されています。

ア つきまとい・待ち伏せ・押し掛け・うろつき等
イ 監視していると告げる行為
ウ 面会や交際の要求
エ 乱暴な言動
オ 無言電話、連続した電話・ファクシミリ・電子メール・SNS等
カ 汚物等の送付
キ 名誉を傷つける
ク 性的しゅう恥心の侵害

警視庁サイトより引用しました

要求する側の注意点

後々のトラブルを避けるために、合意書を作成することが重要です。後から覆されないように「要求した金額」、「不倫関係の解消の代償として請求した旨」などを記載します。

法律的に有効で、将来覆されない合意書を作成するために、できれば、書面作成の専門家である弁護士、行政書士に依頼して作成を行うのが良いかと思います。

法律的に手切れ金支払いの義務はありませんので、執拗に要求を行った場合は、脅迫に該当することもありますのでご注意ください。

限度を超えた嫌がらせは「ストーカー行為」となり、警察に逮捕される可能性もあるのでご注意ください。

また、不倫の事実が不倫相手の配偶者に知られていないケースでは、手切れ金の要求により不倫の事実を知られると、配偶者から慰謝料を請求される可能性があることにも注意が必要です。

 

不倫問題を当事務所に相談

不倫慰謝料の問題でお悩みでしたら、弁護士にご相談ください。

  • 弁護士が依頼者様に代わり交渉
  • 家族や職場に知られるリスクを下げる
  • 24時間受付のスピード対応

法律問題の最適な解決方法は、ケースごとに全く異なります。東京アライズ法律事務所は、依頼者様と弁護士が対話を通じて、『最善の解決イメージ』を共有しながら動くことを心掛けています。

投稿者プロフィール

吉川 樹士
吉川 樹士弁護士
弁護士。東京アライズ法律事務所所属。著作に「3訂 終活にまつわる法律相談 遺言・相続・相続税」、「相続実務が変わる!相続法改正ガイドブック」など。モットーは依頼者様と弁護士が対話を通じて、『最善の解決イメージ』を共有すること。