遺産相続の流れ

1.被相続人の死亡

被相続人が亡くなった時点で、相続が開始されます(民法882条)。したがって、全ての相続手続きの基準となる日は、被相続人の死亡日です。相続人の一人(大抵は被相続人の面倒を見られている方)が被相続人の死亡の直前に預金を引き出してしまったり、死亡直後に、被相続人の死亡の事実を知らせず、預金を引き出したりしますが、これらの扱いについても、死亡前後で手続が異なります。また、相続税の基準となるのも被相続人が亡くなられた日となり、遺産分割協議成立日や、法要後ではありません。

 

2.相続財産の範囲を調査・確定する

前述のとおり、被相続人が亡くなった場合、相続が開始します。そして、被相続人から相続する財産を相続財産といいます。相続財産としては、預金や不動産が一般的ですが、住宅ローンや借金などの債務も相続財産に含まれます。借金などの負債しかない場合やプラスの財産より負債の方が多い場合には、相続放棄を検討することになります。しかも、相続放棄の手続は、原則として、相続があったことを知ってから(死亡日からではありません。)3ヶ月以内にしなければなりませんので、早期に遺産の調査を行う必要があります。 なお、被相続人の借金の状況がわからない場合には、信用情報機関に相続人として調査することもできます。

 

3.相続人の範囲を調査・確定する

被相続人の預金を引き出す場合や後述のとおり遺産分割協議書を作成する場合、遺産である不動産を売却する場合等、様々な場面で、相続人全員の同意が必要となります。 また、具体的な相続分や遺留分等を検討する場合にも、相続人が何名いるかが問題となります。 そこで、被相続人の出生から死亡までの戸籍を集め、法律上の相続人の範囲を確定する作業が必要となります。戸籍をたどると、異母兄弟が存在していたり、死亡直前に、認知した子や養子縁組をした子が存在していたことが判明する場合もあります。 知らない相続人の存在が明らかになると、手続きが円滑に進まない可能性がありますし、専門家により早期の相談する必要性も高まりますので、相続人の調査は、相続財産と併行して早期に行うようにしましょう。

 

4.遺言書の存在を調査する

遺言書が存在すると、原則当該遺言書の内容を前提に、相続が行われます。そのため、遺言書が存在するかを確認する必要があります。 平成元年以降に作成された公正証書遺言であれば全国の公証役場での遺言検索をすることが可能です(なお、公正証書遺言の作成は、居住近くの公証役場で作成しなければならないわけでもありませんので、どこの公正役場で作成しても構いません。)。見つからなかった場合は、遺言検索をしてみるといいかもしれません。 なお、自宅で封がしてある遺言書を発見した場合には、裁判所で検認の手続が必要となりますので、勝手に開封しないようにして下さい。

 

5.相続放棄の判断/3ヶ月以内

相続財産がプラスよりもマイナスが多い場合(債務超過)は、相続放棄を検討しましょう。相続放棄をするためには相続があったことを知ってから3ヶ月以内に、相続放棄の書類を集めて、家庭裁判所へ申し立てを行わなければなりません。ただし、前述の相続財産や相続人の調査している間に、3か月が経過してしまう可能性もあります。また、負債がないと思って、相続放棄をせずに3年が経過したころ、突然債権者から請求書が届き、被相続人に多額の負債があったことが判明する場合もあります。そのような場合に、一切相続放棄ができないかというそのようなこともありません。 一方で、相続放棄する前に相続財産の一部を使ってしまった場合等には相続放棄ができない場合もあります。 このように、原則相続放棄する場合には、時間的制約だけでなく、他の要件がありますので、相続放棄も検討される場合には専門家にご相談されることをお勧めします。

 

6.遺産分割協議

今までに調査した相続財産から、相続人全員で誰がどの財産を相続するのか(分け方)の話し合いを行います。遺産分割協議の作成には、時間的な制限はありません。 相続人全員で作成する必要がありますので、相続人間が仲がよければいいのですが、そうではない親族関係においては十分に注意して話し合いを行うようにしましょう。もし、相続人同士で話がまとまらない場合には、遺産分割調停の申立を家庭裁判所に提起する方法があります。調停で話し合いがつかなければ審判手続に移行し、裁判所が強制的に割合を決定することになります。しかし、裁判になれば、費用も時間もかかりますので、できるだけ相続人間で解決するのがいいかと思います。

 

7.相続預貯金の解約・相続不動産の名義変更、他
 

遺産分割協議の内容に従って預貯金の解約手続きや払戻し手続き、不動産の名義変更(相続登記)をしていくこととなります。預金の解約についても、相続人全員の同意が必要となりました。 この名義変更には特に期限の定めはありません。預貯金の解約手続きはそれぞれの金融機関に対して行い、不動産の名義変更については、相続不動産の所在地を管轄する法務局の方へ登記申請をします。

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投稿者プロフィール

吉川 樹士
吉川 樹士弁護士
弁護士。東京アライズ法律事務所所属。著作に「3訂 終活にまつわる法律相談 遺言・相続・相続税」、「相続実務が変わる!相続法改正ガイドブック」など。モットーは依頼者様と弁護士が対話を通じて、『最善の解決イメージ』を共有すること。