遺言書作成のメリットが大きいケース
「遺言書を書くべきか悩んでいる」、「遺言書にかける費用が無駄に思える」というお悩みを持つ方向けの記事です。
遺言書作成のメリットは「遺産分割をめぐる争いを未然に防止できる」、「各相続人の実態や生活状況に応じて法定相続分を修正できる」、などですが、特にメリットが大きいケースが存在します。
遺言書を作成するかどうかの判断材料として、遺言書作成のメリットが大きい(トラブルを防げる)ケースを羅列して説明いたします。
夫婦に子どもと親がいない場合
子供と親がいない夫婦で、夫が亡くなった時には妻に全財産を相続させることを希望しているケースです。夫の兄弟姉妹も法定相続人となり遺産分割が行われます。
遺言書なし
法定相続分に従い妻には75%しか相続されません。夫の兄弟姉妹に25%の相続が行われます。
妻 | 75% |
---|---|
兄弟姉妹 | 25% |
遺言書あり
夫が「妻に全財産を相続させる」という遺言書を残しておくと、希望通りに妻に全財産が相続されます。兄弟姉妹には遺言書を残した場合の最低限度の取り分である遺留分がないことがポイントになります。
妻 | 100% |
---|
子どもの配偶者に財産を分与したい場合
子どもの配偶者は法定相続人ではないので、例えば長男の妻に老後の世話になっていたとしても、妻には相続権がありません(※)。長男の妻に財産を分与するには遺言書を作成する必要があります。
※長男の寄与分として認められる余地があり、また特別寄与料請求権(2019年7月施行)により今後認められる方向ですが、遺言書を残しておくとより確実です。
遺言書なし
子どもの配偶者は法定相続人でないため、取り分はありません。
子どもの配偶者 | なし |
---|---|
その他相続人 | 100% |
遺言書あり
遺言書を残すことで、子どもの配偶者に財産を分与することができます。
長男の妻 | 例)25% |
---|---|
その他相続人 | 75% |
前妻の子どもと後妻の子どもがいる場合
前妻の子どもと後妻の子どもは、いずれも夫の相続人になりますが、遺産分割で争いが生じやすいので、遺言書により、きちんと財産を分与しておくと争いの予防になります。
遺言書なし
遺産分割協議に前妻の子も含める必要があります。前妻の子が分割内容に合意しないと、遺産相続を行うことができず、裁判になる可能性もあります。
遺言書あり
遺産分割協議なしで遺産相続を行うことができます。
※前妻の子は、財産が分与されない場合、遺留分を請求することができます(図の例だと遺留分は1/12)。
子どもごとに相続割合を変えたい場合
自分を介護してくれた子どもと、そうでない子どもで相続の割合を変えたいなどの希望がある場合は、遺言書を作成する必要があります。
相続人が全くいない場合
相続人が全くいない場合には、遺産は原則として国庫に帰属します。平素お世話になっている方や法人に財産を分与するには、遺言書を作成する必要があります。
親族以外に財産を分与したい場合
親族以外に平素お世話になっている方に財産を分与したい場合は、親族の法定相続人だけで遺産分割が行われてしまわないように、遺言書を作成する必要があります。
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投稿者プロフィール

- 弁護士
- 弁護士。東京アライズ法律事務所所属。著作に「3訂 終活にまつわる法律相談 遺言・相続・相続税」、「相続実務が変わる!相続法改正ガイドブック」など。モットーは依頼者様と弁護士が対話を通じて、『最善の解決イメージ』を共有すること。
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