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自首について知りたい

自首について知りたい

 

犯罪を犯してしまったが、深く反省をしている、いつ警察に逮捕されてしまうのか不安なため、自首したいと考えている。しかし、自首すると身柄を拘束され、幼い子供の世話ができなくなってしまうのではないか、仕事を失ってしまうのではないか、のような心配事があり、自首をするかどうか迷っている。

本ページではそのような方向けに、自首について説明します。

 

自首が成立するには

警察に出頭すれば必ず自首が成立するわけではなく、自首が成立するには、捜査機関(警察など)が犯人を特定できていないこと、犯人が自発的に犯罪を申告したことが必要となります。

<自首が成立する場合>

  • 捜査機関が事件を認識しているが、まだ犯人を特定できていない段階で出頭する
  • 捜査機関がまだ事件を認識していない段階で出頭する

<自首が成立しない場合>

  • 捜査機関により指名手配されている段階で出頭する
  • 捜査機関の取り調べを受け自白する

自首の決断が遅れると、その間に捜査機関(警察など)が犯人を特定してしまい、自首が成立しなくなりますので、素早い決断が必要となります。
なお、自首が成立しなくても、犯人自ら出頭した場合には、逃亡と比べて情状が良くなります。

 

自首のメリット

逮捕され身柄拘束される可能性が低くなる
自首を行うと、逮捕され身柄拘束される可能性が低くなります。つまり、起訴、不起訴の決定までの間、身柄拘束されずに日常生活を送ることができる可能性が高くなります。
なぜ逮捕され身柄拘束される可能性が低くなるかというと、逮捕し身柄拘束を行う理由は、逃亡、証拠隠滅の恐れがあるからです。しかし、自首した場合は、自ら出頭しており、基本的には証拠も自ら提出しているため、逃亡、証拠隠滅の恐れはなく、逮捕し身柄拘束する理由がないからです。

不起訴となる、刑罰が軽くなる可能性が高くなる
自首は、反省の態度を表しているため情状が良くなり、自首しないよりも不起訴となる可能性が高くなります。また、起訴となった場合でも、刑法第42条に「罪を犯した者が捜査機関に発覚する前に自首したときは、その刑を減軽することができる。」と規定があるため、裁判官が刑を軽減する可能性が高くなります。
なお、自首が成立しない出頭の場合でも、逃亡と比較すると情状が良くなり、不起訴となる、刑罰が軽くなる可能性が高くなります。

自首についての相談、同行依頼などがありましたら弁護士にご相談ください。
また、刑事事件として扱われない場合など、自首の必要がないケースもあります。自分で自首を行うべきかどうか分からない場合についても弁護士にご相談ください。

無実を証明したい

無実を証明したい

 

無実の証拠の収集

無実を証明するためには、無実の証拠を収集することが重要です。
どのような物が証拠となるか分からない、警察、検察に身柄を拘束されており証拠の収集が困難、などの場合は、弁護士に依頼することも考えられます。

 

虚偽の自白を行わない

また、やっていないのにやったという虚偽の自白を行わないこと、調書に署名しないことなどが無実を主張し続ける上で重要です。
警察、検察は容疑者が犯人ではないかと疑っており、身柄を拘束されての取り調べは厳しいものとなりますが、虚偽の自白を行ったり、捜査機関のストーリーに従い調書にサインしてしまうと、犯人である重要な証拠となってしまいます。

弁護士に依頼することで、黙秘権を行使すべきケース,調書にサインしない場合など、取調べに対するアドバイスを行うとともに、容疑者を安心させることができます。
特に、逮捕後の捜査中(最大48時間)、送検後の捜査中(最大24時間)は容疑者の家族であっても面会することができませんが、弁護士であれば面会することが可能です。

前科をつけたくない

前科をつけたくない

起訴され刑事裁判が行われると、99.9%のケースで有罪となり前科がつきます。100万円以下の罰金に相当する事件などの条件を満たすと、刑事裁判が行われない略式起訴を選択することもできますが、その場合も前科がつきます。したがって、前科をつけないためには、不起訴となることが非常に重要になります。
また、起訴されずに不起訴となるケースは66.6%(法務省:平成29年版 犯罪白書より)となっています。
起訴されずに不起訴となるためには、下記が重要です。
・被害者との示談を行うこと
・深い反省を行い、その証拠を示すこと
・無実である場合、その証拠を示すこと

 

前科のデメリット

前科がつくと以下などのデメリットがあります。
・次回の犯罪において刑罰が重くなる
前科があることは検察庁、警察庁に記録が残されます。再度犯罪の加害者になった場合には、再犯の恐れがあると判断され、刑罰が重くなる可能性が高くなります。

・会社の懲戒対象になる可能性がある
有罪となり前科がついた場合に、就業規則により懲戒対象となる可能性があります。ただし、懲戒が有効かどうかは就業規則だけでなく、その他の状況も考慮して判断されます。

・就職活動にて不利になる可能性がある
履歴書に賞罰欄があり、前科について記入した場合に、就職活動に不利に働く可能性があります。前科があることを書かなくても、前科の記録は公開されているわけではないので、発覚する可能性は低いと思われますが、ネットの記事により発覚する可能性もありますし、そもそも賞罰欄へ記載しないことは経歴詐称とも考えられます。

・資格、職業が制限される
前科があると一定期間、資格、職業が制限される可能性があります。

示談をしたい

示談をしたい

 

示談により、加害者が深く反省しお金を支払うなどする代わりに、被害者が事件を解決とすることに合意します。すると、警察、検察によって釈放、不起訴となる可能性が高くなり、また起訴後であっても刑罰が軽くなる、執行猶予が付く可能性が高くなります。
特に親告罪では、示談により被害者の告訴が取り下げられると、その時点で事件の捜査は終了し不起訴となります。親告罪には名誉毀損、器物損壊などがあります。強制わいせつ罪は、以前は親告罪でしたが、法改正により非親告罪になりました。

示談交渉できる事件は、名誉毀損、強制わいせつ、器物損壊、傷害、詐欺など被害者のいる事件です。被害者がいない薬物犯罪などでは示談を行うことができません。

示談のためには被害者の連絡先を知る必要があります。
しかし、警察や検察に問い合わせても、被害者が加害者に連絡先を教えることを拒否し、教えてもらえないケースが多くあります。その場合は、弁護士を加害者の代理人とし、弁護士が代わりに被害者と連絡を取るように約束することで、被害者が連絡先を教えることを許可し、示談交渉を進められるようになる可能性があります。

刑事事件の流れ

刑事事件の流れ

逮捕

逮捕されると、逃亡などが行われないよう警察に身柄を拘束され、取り調べなど捜査が行われます。逮捕には、一般人から現行犯逮捕される、逮捕状を持った警察官から逮捕される、などのケースがあります。
警察が逮捕により身柄を拘束できる時間は最大48時間で、その後身柄を検察官に送検されます。東京だと、通常逮捕された翌日になります。
しかし、被害者と示談が成立している場合、起こした犯罪が軽微な場合などでは、身柄を送検することなく微罪処分となり釈放されるケースもあります。
逮捕の捜査中(最大48時間)は逮捕者の家族であっても面会することができませんが、弁護士であれば面会することが可能です。弁護士が面会することには、逮捕者を安心させることができる、取調べに対するアドバイスを行うことができる、釈放、不起訴に向けた活動を行える、などのメリットがあります。

 

送検

微罪処分にならなかった場合、その後身柄を送検され、検察官により、取り調べなど捜査が行われます。
検察官が身柄を拘束できる時間は最大24時間で、その間に勾留請求するか,釈放するか,または起訴するかの決定を行います。
勾留の請求が行われると、裁判官による被疑者への面談、資料の検討などが行われ、裁判官が勾留か釈放かを決定します。弁護士は,意見書や身柄引受書や証拠等提出し,被疑者を釈放するよう働きかけることができます。意見書は,当日の午前中早めに出す必要がありますので,迅速な対応が不可欠となります。
送検後の捜査中(最大24時間)は逮捕の捜査中と同様に、逮捕者の家族であっても面会することができませんが、弁護士であれば面会することが可能です。弁護士が面会することには、逮捕者を安心させることができる、取調べに対するアドバイスを行うことができる、釈放、不起訴に向けた活動を行える、などのメリットがあります。

 

勾留

勾留決定された場合、原則10日間、警察署内の留置場や拘置所に拘束され、引き続き取り調べなど捜査が行われます。そして、事件の重大性や被疑者の反省の態度、前科の有無、被害者との示談の有無などを考慮し、起訴・不起訴の判断をします。特に判断を決める上で被害者との示談ができているかどうかは重要な要素です。
10日間で捜査が終わらない場合、検察官は裁判所に勾留延長を請求し、認められれば最大10日間勾留期間が延長されます。勾留延長は基本的には1度しかできないので、勾留期間は最大20日間となります。

 

釈放

釈放されると身柄の拘束を解かれ、自宅に帰ることができます。会社、学校を長期間に渡り欠勤せずに済むようになりますので、事件のことを会社、学校に知られずに済む可能性が高くなります。
釈放された理由が微罪処分、冤罪などではない場合、在宅捜査として捜査は継続します。したがって、釈放された後も,不起訴処分に向けた弁護活動が重要となります。また、釈放されても、取り調べの出頭要請に対しては応じる必要があります。

 

起訴

起訴されると、引き続き身柄を拘束され、2か月ほど後に刑事裁判が行われます。刑事裁判では99.9%有罪となり前科がつきます。したがって、起訴前の不起訴処分に向けた活動が重要となります。
100万円以下の罰金に相当する事件であるなどの条件を満たすと、釈放され刑事裁判も行われない略式起訴を選択することもできますが、その場合も前科がつきます。
起訴後の身柄拘束については、保釈の申請を行うと解いてもらえる可能性があります(認められるかどうかは、言い分や前科の有無、保釈保証金額、裁判の進行状況等によって異なりますので、必ず保釈が認められるわけではありません。)

 

不起訴

不起訴処分になると、刑事裁判は行われず前科はつきません。以降、原則取り調べや勾留などは行われません。

長男の妻が父親の面倒をみていた場合に、その分長男が法定相続分以上の財産を相続することができるだろうか

長男の妻が父親の面倒をみていた場合に、その分長男が法定相続分以上の財産を相続することができるだろうか

 

(設問)

   父(長男の父)をその生前10年間にわたり入院先の病院で付添いをしたり自宅で入浴や食事の世話のほか日常の細々とした介護を行っていた場合長男は父の相続財産を相続する場合に、妻の介護分だけ多く相続することができるか。
なお、他に相続人は長男の弟(二男)がおりまた父の遺言はないことを前提にします。

 

(答え)

   介護分が寄与分として認められれば、法定相続分より多く相続できます。一般に寄与分が認められる場合とは、介護を要する状態で、親族の扶養義務の範囲を超えるような形態の介護を行った場合など特別な寄与があったといえる場合でないと原則認められません。
なお東京高裁平成22年9月13日決定は長男の妻が長男の履行補助者として看護や介護をしているという法律構成により長男の寄与分を認定しています。

 

(解説)

寄与分制度の概略(寄与分の主張は相続人に限る。)
寄与分制度は被相続人の事業に関する労務の提供又は財産上の給付被相続人の療養看護その他の方法により被相続人の財産の維持又は増加に「特別の寄与(貢献)」をした相続人に対して遺産の分割に当たって法定又は指定相続分にかかわらず遺産のうちから寄与に相当する額の財産を取得させることによって共同相続人間の公平を図ろうとするものです(民法904条の2第1項)。
寄与の方法としては民法904条の2第1項は「被相続人の事業に関する労務の提供又は財産上の給付被相続人の療養看護その他の方法」を挙げています。
そしてこれらの方法により被相続人の財産の維持又は増加に「特別の寄与(貢献)」をした相続人があるときは①寄与分を金銭的に評価しこれを寄与した相続人に取得させかつ②その評価額を相続財産から控除したものを相続財産とみなしこの「みなし相続財産」を基礎として各相続人の相続分を算定します。寄与の主な方法を挙げると以下のようになります。
    1. 被相続人の事業に関する労務の提供(家業従事型)の例
      相続人が被相続人の事業である農業や自家営業(医師弁護士税理士司法書士等)に無給又はこれに近い状態で従事する場合が挙げられます。

 

    1. 被相続人の事業に関する財産上の給付(金銭等出資型)の例
      相続人が自己の資金を提供して被相続人の事業に関する借金を代位弁済したり被相続人名義で事業用の財産を取得するなどして被相続人の財産の維持又は増加に特別の寄与した場合が挙げられます。

 

  1. 被相続人の療養看護(療養看護型)の例
    被相続人が病気・老齢等の理由により身体的・精神的に看護が必要である場合に特定の相続人が長年その看護に従事したことにより看護費用の支出を免れるなどして被相続人の財産の維持に貢献したような場合が挙げられます。
   本件は、上記2(2)ウの被相続人の療養看護(療養看護型)の問題であり長男の妻の義父に対する介護がどのような場合に長男の寄与分として主張できるかが問題となります。
この点につき裁判例では簡単には「特別の寄与」を認めず一般に親の入院時の世話や通院の付き添いは同居親族の相互扶助の範囲内(親族の扶養義務の範囲内)であるのでこれだけでは足りずこれにより介護費用の支出を免れ財産維持に貢献したと認められる場合でなければ「特別の寄与」があったとはいえないとしています(大阪家裁堺支部審平成18年3月22日家月58巻10号84頁参照)。
特別の寄与を認めた東京高裁平成22年9月13日決定(家月63巻6号82頁)は長男の妻による被相続人の入院中の看護の一部や死亡直前半年間の介護(毎晩失禁の状態)は家政婦などを雇って当たらせることを相当とする事情の下で行われその余の介護も13年余りの長期間にわたって継続して行われたものであって長男の妻による長男の履行補助者としての上記看護や介護は同居の親族の扶養義務の範囲を超えて相続財産の維持に貢献したと評価することができるとして当該療養看護の寄与分として200万円を認定しています(同内容の審判例として東京家審平成12年3月8日家月52巻8号35頁参照)。
本件についてもこのような観点から特別の寄与があったどうか判断されることになりますが一般に介護を要する状態で親族の扶養義務の範囲を超えるような形態の介護を行った場合に初めて特別の寄与があったと判断されるものと考えられます。
なお上記東京高裁平成22年9月13日決定は長男の妻が長男の履行補助者として看護や介護をしているという法律構成により長男の寄与分を認定しています。
ところで寄与分は被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から「遺贈の価額」を控除した額を超えることはできない(民法904条の2第3項)とされていることから被相続人が相続財産の分配方法をすべて遺言で指定しておけば寄与分が機能する余地はないことになりますので、ご注意下さい。

相続人が遺産から葬儀費用や仏壇・墓石購入費に充てた後に相続の放棄はできなくなってしまうのか?

相続人が遺産から葬儀費用や仏壇・墓石購入費に充てた後に相続の放棄はできなくなってしまうのか?

 

(設問)

   父死亡後1か月間内において父の唯一の遺産である銀行預金約300万円から父の葬儀費用として約200万円仏壇購入費として約100万円(合計300万円)を支出しました。ところが3日前(父死亡の2年後)にA銀行から突然父が生前父の友人がA銀行から700万円も融資を受けた際にその連帯保証人になっていたので700万円の支払をしてほしい旨の請求の通知が来ました。今から相続放棄の手続をとることができるだろうか。

(答え)

   本来、相続放棄は、被相続人の死亡を知った時から3か月以内にする必要があります。また、相続財産から支出してしまうと本来「相続財産の処分」(民法921条1号)にあたり、放棄ができなくなってしまうのが原則ですので、ご注意下さい。
但し、本件は、父親にこのような多額の借金があることが分からかなったこと、相続人が遺産である銀行預金の解約金から葬儀や仏壇購入に充てた費用の額がいずれも社会的にみて不相当に高額のものともいず民法921条1号の「相続財産の処分」には当たるとまではいえないと思いますのでA銀行から700万円の請求通知を受けた時から3か月以内であれば相続放棄の申述をすることが可能であると考えられます。
なお香典は相続財産(遺産)には含まれないとするのが通説です。

(解説)

1.相続の単純承認と放棄について

(1)相続の単純承認
    1. 相続の単純承認とは相続人が被相続人の権利義務を全面的に承継することを内容として相続を承認する相続形態をいいます(民法920条)。単純承認は無条件・包括的になされる必要がありその一部を承認したりまた条件や期限を付すことはできません。
  1. 相続の放棄とは相続人が相続の開始によって不確定的に生じた相続の効果を確定的に拒否し初めから相続人でなかった効果を生じさせる相続形態をいいます(民法938条)。放棄も単純承認同様に無条件・包括的になされる必要があり一部を放棄したりまた条件や期限を付すことはできません。
(2)相続の承認又は放棄のための熟慮期間(原則3か月)
相続の承認又は放棄は原則として相続人が自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内にされなければなりません(民法915条1項)。この3か月の期間は相続人が承認及び放棄のための熟慮期間であると同時に相続財産の調査期間(民法915条2項)です。ただし上記3か月の熟慮期間は利害関係人又は検察官の請求によって家庭裁判所がこれを伸長することができます(民法915条1項ただし書)。
(3)法定単純承認行為
    1. 相続人は以下のような場合には単純承認をしたものとみなされます(民法921条1号~3号。法定単純承認)。
      相続人が相続財産の全部又は一部を処分したとき(ただし保存行為及び短期賃貸借をするときは除く。)(1号)
      相続人が民法915条1項の熟慮期間内に限定承認又は放棄をしなかったとき(2号)
      ③相続人が限定承認又は放棄をした後でも相続財産の全部又は一部を隠匿し相続債権者等に損害を与えることを知りながらこれを消費・処分し又は悪意でこれを財産目録中に記載しなかったとき(ただしその相続人が相続の放棄をしたことによって相続人となった者が相続の承認をした後は除く。)(3号)
  1. したがって本件法律相談のように被相続人の遺産から葬儀費用や仏壇購入費を支払った場合には形式上①民法921条1号の「相続財産の処分」に当たりまた②民法915条1項の3か月の熟慮期間内に相続の放棄をしなかったとき(民法921条2号)に当たり相談者(相続人)はもはや相続の放棄ができないのではないかという疑問が生じます。

2.本件に関する検討

(1)同種の裁判例の紹介
    1. 本件相談に関連する裁判例として大阪高裁平成14年7月3日決定(家裁月報55巻1号82頁。以下「本大阪高裁決定」という。)があります。
    1. 本大阪高裁決定の事案の概要は以下のとおりです。
      (ア) 香典として144万円を受領しまた被相続人名義で預入金額300万円の郵便貯金(本件貯金)があり、被相続人の葬儀費用等として約273万円、仏壇を約93万円墓石を約127万円で購入し不足分46万円余りは上記妻子が自己負担した。
      (イ) その後3年が経過したときに、Y信用保証協会から突然被相続人宛てに保証債務の返済金等約5900万円の残高通知を受けた。そこで上記妻子(相続人)は当該残高通知を受けた時点から3か月以内に相続放棄の申述をした。
  1. 本大阪高裁決定は原審判が上記妻子の相続放棄の申述を却下したのに対し以下(決定要旨)のとおり原審判を取り消して上記妻子の相続放棄の申述を受理しました。
    (ア) 相続財産の葬儀費用への充当について
    相続財産をもって被相続人の葬儀費用に充当しても社会的見地から不当なものとはいえない。したがって相続財産から葬儀費用を支出する行為は民法921条1号の「相続財産の処分」には当たらない。
    (イ) 相続財産の仏壇・墓石購入費用への充当について
    上記妻子が購入した仏壇及び墓石はいずれも社会的にみて不相当に高額のものともいえない上一部は自己負担している。以上によれば相続財産から仏壇・墓石の購入費用の一部に充てた行為は明白に民法921条1号の「相続財産の処分」には当たるとは断定できない。
    (ウ) 相続放棄の申述期間の起算点について
    ①相続人は「自己のために相続の開始があったことを知った時」から3か月以内に相続の放棄等をしなければならない。そして相続人が相続開始の原因となる事実及びこれにより自己が法律上相続人となった事実を知った時から3か月以内に相続放棄等をしなかったのが相続財産が存在しないと信じたためでありかつこのように信ずるについて相当の理由がある場合には民法915条1項所定の期間は相続人が相続財産の全部若しくは一部の存在を認識した時又は通常これを認識しうべかりし時から起算するのが相当である(最判昭和59年4月27日民集38巻6号698頁参照)。
    ②上記妻子が相続債務があることを知ったのは前記Y信用保証協会からの残高通知書に接した時でありそれまで相続債務がないと信じたことはやむを得ないこというべきであり民法915条1項所定の期間は上記妻子がY信用保証協会からの残高通知書に接した時から起算すべきであり上記妻子の相続放棄の申述は民法915条1項所定の期間を経過した後のものとはいえない。
    (エ) これらの根拠に、上記判例においては、相続放棄を受理しました。

内縁の夫が死亡した場合において夫所有の家屋に同居していた内縁の妻はその後も居住することができるか

内縁の夫が死亡した場合において夫所有の家屋に同居していた内縁の妻はその後も居住することができるか

 

1.はじめに

   新民法では配偶者の短期居住権及び長期居住権について明文化されたわけですが内縁の夫婦の一方が死亡した場合の他方の居住権について規定されていません。そこで裁判ではどうなっているかをまずご説明します。

 

2.裁判例の紹介(要旨)

①最高裁昭和39年10月13日判決(民集18巻8号1578頁)
本判決では原判決(福岡高判昭和37年4月30日下民集13巻4号942頁)同様に内縁の妻に居住権までは認定せずに相続人の家屋明渡請求が権利の濫用にあたり許されないと判示したものを追認しました。そして権利濫用の反射的効果として居住が認められることになります。②最高裁平成10年2月26日民集52巻1号255頁
内縁の夫婦がその共有(各持分2分の1)する不動産を居住又は共同事業のために共同で使用してきた場合において内縁の夫が死亡しその相続人が共有持分2分の1を相続して内縁の妻にその持分2分の1を超える使用利益につき不当利得の返還請求をした事案において特段の事情のない限り両者(内縁の夫婦)の間においてその一方が死亡した後は他方が当該共有不動産を単独で使用する旨の合意が成立していたものと推認するのが相当であるとして不当利得返還義務を負わない旨判示した。
本判決は内縁の夫婦間の使用貸借の合意を認めたものではなく共有物の単独の使用収益に関する合意について事実推定を認めたものであると解されます(常岡史子「内縁の夫所有の建物についての内縁夫婦間の使用貸借契約の成立と内縁の夫の相続人から内縁の妻に対する明渡請求」(判例評論633号18頁)。他の共有者である内縁の夫の相続人は共有解消のために共有物の使用分割請求(民法256条)等をすることになると思われます(しかしこの分割請求が更に権利の濫用になる場合もあると思われる。)。

③大阪高裁平成22年10月21日(判時2108号72頁)
内縁の夫の唯一の相続人(長女)が内縁の夫所有の建物に同人と同居していた内縁の妻に対して建物明渡請求等をした事案において内縁の妻は40年にわたり内縁の夫に尽くし内縁の夫が相続人たる長女のほか長女の夫内縁の妻その兄夫婦の前で自分にもしものことがあったら内縁の妻に本件建物をやりそこに死ぬまでそのまま住まわせて1500万円を渡してほしい旨申し渡しているなどの事情から黙示的に内縁の妻が死亡するまで本件建物を無償で使用させる旨の本件使用貸借契約が成立していたものと認めるのが相当であるとして本件明渡請求を棄却した(なお本判決は使用貸借契約の書面化をしていなかった点につき内縁の夫が長女側に何回もその旨の意向を伝え長女もその意向を認識していたのであえて書面化まで必要であると考えていなかったとしても格別不合理ではないなどと判示)。
本判決は原判決(神戸地判平成22年10月21日判時2108号77頁)が使用貸借契約の存在を否定して権利濫用の法理を適用して明渡請求を棄却したのに対し権利濫用の法理に委ねることなく内縁の妻の死亡までの使用貸借契約の存在を認めたものです。

 

3.上記裁判例及び本設問の各検討

   本設問のような事例上記③の事例のように内縁の夫婦間に明確な使用貸借の合意が認められない限り(同契約書を作成しておくか相続人側にも使用貸借契約の成立を明確に伝えることが必要である。)使用貸借契約の成立の認定は難しいといえます。但し内縁関係が長期間に及ぶ場合は権利濫用の法理によって相続人の家屋明渡請求が否定されることになります。
本設問では内縁の夫婦間に使用貸借などの契約書の取り交わしや使用貸借の合意が認められないので使用貸借契約の成立を認めるのは困難ですが20年にわたって同居していたので内縁の妻の居住の必要性等を考慮し権利濫用の法理によって相続人の家屋明渡請求を拒むことができる場合があると考えられます。
なお権利濫用の法理が適用される場合において内縁の妻が今後居住できる期間が問題となりますが結局は同居期間内縁の妻の居住の必要性・居住を必要とする期間居住家屋の使用の目的・方法相続人の家屋使用の必要性等の諸事情を総合的に判断して決められるものと思われます(使用貸借の期間につき最判平成11年2月25日判時1670号18頁参照)。このようなケースの解決法として相続人が内縁の妻の承諾を得て本件家屋及びその敷地を売却しその売却金の一部を内縁の妻に立退費用等として交付することも考えられます。
ちなみに遺産分割前の遺産共有の事案において共同相続人の1人が相続開始前から被相続人の許諾を得て遺産である建物に被相続人と同居してきた場合は特段の事情のない限り被相続人死亡時から少なくとも遺産分割終了までの間は被相続人の地位を承継した他の相続人を貸主同居相続人を借主とする建物の使用貸借契約が存続するとした裁判例があります(最判平成8年12月17日民集50巻10号2778頁)。しかし内縁の妻の居住保護の観点からこの裁判例が本設問のような事例に直接適用されるとは思われません。

以上

遺言の検認手続きについて

遺言の検認手続きについて ~遺言書が発見された場合、その場で遺言書を開封していいか~

 

1.はじめに

   今回は、自筆証書遺言における家庭裁判所での検認手続について、お話しします。自筆証書遺言とは、遺言者が遺言書の全文、日付及び氏名を自署し、これを押印することによって成立する遺言です(民法968条1項)。自筆証書遺言は、最も容易な遺言方式で、費用も要せず、また遺言署の作成事実やその内容の秘匿性を保持できるという利点があります。しかし、遺言書の紛失、隠匿、改変等の危険がある上に、家庭裁判所の検認手続を必要とします(民法1004条1項)。なお、公正証書遺言であれば、公証人が作成し、公証役場で当該遺言所の原本を保管するので、この検認手続は不要となります。

 

2.家庭裁判所による検認手続等

(1)検認請求
遺言書の保管者や遺言書を発見した相続人は、相続の開始を知った後、遅滞なく、遺言書を家庭裁判所に提出して検認の請求をしなければなりません(民法1004条1項)。提出先は、相続開始地の家庭裁判所です。
なお、封印のある遺言書の保管者やこれを発見した相続人は、勝手に開封することなく、家庭裁判所に検認の請求をする必要があります。そして、裁判所で開封することなり(民法1004条3項)、これに反して、開封すると、5万円以下の過料に処せられます(民法1005条)。
(2)相続人の立会いの機会付与
裁判所書記官は、申立人及び相続人に対し、遺言書の検認期日を通知します(家事事件手続規則115条1項)。但し、検認手続に出頭するかどうかは相続人の自由に任されています。
(3)検認手続
検認の際、審判官(裁判官)は、出頭した遺言書の保管者や相続人全員に遺言書の原本を順次閲覧させ、遺言書を保管するに至った事情、発見時の状況、筆跡、印鑑についての意見等を聴取するなどして、遺言の方式に関する一切の事実を調査します(家事事件手続規則113条)。
(4)検認手続の終了
検認手続が終了すると、裁判所書記官は、申立人の申請により「検認済証明書」を遺言書の末尾に編てつした上、契印したものを交付します。また、検認期日に立ち会わなかった申立人・相続人・受遺者・その他の利害関係人に検認がなされた旨を通知しなければなりません(家事事件手続規則115条1項・2項)。
(5)検認の効果
検認を経ない自筆証書遺言に基づく相続登記申請は受理されず、却下されます(平成7年10月18日民三台4344号法務省民事局第三課長通知)。また、被相続人の銀行預金を解約する場合にも、この遺言書を提示する必要があります。
なお、遺言書の提出を怠り、検認を経ないで遺言を執行し、又は家庭裁判所以外で封印のある遺言書を開封した者には、5万円以下の過料に処せられます(民法1005条)。但し、これによって、遺言が無効になるわけではないと考えられています。

 

3.自筆証書遺言の保管制度の創設(民法(相続関係)等の改正に関する要綱案のたたき台より)

   現在、法務省の法制審議会の民法(相続関係)部会で審議中の「民法(相続関係)等の改正に関する要綱案のたたき台(2)」によりますと、自筆証書遺言をした者の申請により、法務局にその遺言所の原本の保管を委ねることができる制度の創設が検討されており、これによれば、当該機関に保管することで、裁判所での検認手続が不要になるようで、注目されております。    検認申立書式や封印ある遺言書の作成方法等、本原稿のより詳しい内容については、戸籍時報2017年9月号当事務所弁護士作成の「身近な家族法の知識(第54回)」を参考にしていただければと思います。

遺留分減殺請求権の消滅時効が停止する場合とは?

遺留分減殺請求権の消滅時効が停止する場合とは?

 

    1. 遺留減殺請求権は原則1年で時効消滅してしまいます。そのため消滅しないために遺留減殺請求権を行使する旨の通知を出す必要があります。ではこのような通知を物理的に出すことができなかった場合にも一律に時効消滅してしまうのでしょうか?この点について1年経過後も時効消滅しないとした事件具体的には最高裁平成26年3月14日第二小法廷判決(裁判所ホームページ。以下「本最高裁判決」という。)がありますので今回は当該判例を紹介したいと思います。
    1. 具体的な事例としては亡Bの妻X(上告人)がBがその遺産の全てを長男Y(被上告人)に相続させる旨の自筆証書遺言をしたことにより遺留分が侵害されたと主張して長男Yに対し遺留分減殺を原因として亡Bが不動産の所有権等の一部移転登記手続等を求めたところ妻Xの遺留分減殺請求権が時効によって消滅したか否かが問題となった事案において時効期間の満了前6箇月以内の間に精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者に法定代理人がない場合において少なくとも時効期間の満了前の申立てに基づき後見開始の審判がされたときは民法158条1項(時効の停止)が類推適用され遺留分減殺請求権の消滅時効は完成しないと判示し当該消滅時効の完成を認めた原判決(東京高裁平成25年3月19日判決)の判断を覆しました。
    1. 本最高裁判決の事案では民法158条1項の類推適用の有無が問題となりました。民法158条1項は「時効の期間の満了前6箇月以内の間に未成年者又は成年被後見人に法定代理人がないときはその未成年者若しくは成年被後見人が行為能力者となった時又は法定代理人が就職した時から6箇月を経過するまでの間はその未成年者又は成年被後見人に対して時効は完成しない。」と規定していますがその趣旨は未成年者又は成年被後見人(以下「成年被後見人等」という。)は法定代理人を有しない場合には時効中断の措置を執ることができないのであるから法定代理人を有しないにもかかわらず時効の完成を認めるのは成年被後見人等に酷であるとしてこれを保護するところにあると解されます(本最高裁判決参照)。しかし本最高裁判決の事案は後見開始の審判がされる前に形式上消滅時効が完成した事案であるので民法158条1項が直接適用される場合には当たりません(つまり同項にいう成年被後見人には該当しません。)。
  1. この点原審(東京高裁平成25年3月19日判決)は「時効の期間の満了前に後見開始の審判を受けていない者に民法158条1項は類推適用されない」として遺留分減殺請求権の時効消滅を認めましたが本最高裁判決はこれを覆し「(1)・・(中略)・・。また上記規定(執筆者注:民法158条1項)において時効の停止が認められる者として成年被後見人等のみが掲げられているところ成年被後見人等についてはその該当性並びに法定代理人の選任の有無及び時期が形式的画一的に確定し得る事実であることからこれに時効の期間の満了前6箇月以内の間に法定代理人がないときという限度で時効の停止を認めても必ずしも時効を援用しようとする者の予見可能性を不当に奪うものとはいえないとして上記成年被後見人等の保護を図っているものといえる。ところで精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にあるもののまだ後見開始の審判を受けていない者については既にその申立てがされていたとしてももとより民法158条1項にいう成年被後見人に該当するものではない。しかし上記の者についても法定代理人を有しない場合には時効中断の措置を執ることができないのであるから成年被後見人と同様に保護する必要性があるといえる。また上記の者についてその後に後見開始の審判がされた場合において民法158条1項の類推適用を認めたとしても時効を援用しようとする者の予見可能性を不当に奪うものとはいえないときもあり得るところであり申立てがされた時期状況等によっては同項の類推適用を認める余地があるというべきである。そうすると時効の期間の満了前6箇月以内の間に精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者に法定代理人がない場合において少なくとも時効の期間の満了前の申立てに基づき後見開始の審判がされたときは民法158条1項の類推適用により法定代理人が就職した時から6箇月を経過するまでの間はその者に対して時効は完成しないと解するのが相当である。(2)これを本件についてみると上告人についての後見開始の審判の申立ては1年の遺留分減殺請求権の時効の期間の満了前にされているのであるから上告人が上記時効の期間の満了前6箇月以内の間に事理を弁識する能力を欠く常況にあったことが認められるのであれば民法158条1項を類推適用してA弁護士が成年後見人に就職した平成22年4月24日から6箇月を経過するまでの間は上告人に対して遺留分減殺請求権の消滅時効は完成しないことになる。」と判示し上記(2)の点(つまり上告人(妻X)が上記時効の期間の満了前6箇月以内の間に精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にあった否か)を更に審理させるため本件を原審に差し戻しました。
    このように物理的に遺留分減殺請求権が行使できるようになるまで時効消滅しないと判断しました。
    なお同旨の判例として不法行為に基づく損害賠償請求権の除斥期間(20年間)に関する最高裁平成10年6月12日第二小法廷判決(民集52巻4号1087頁)がありますので参考にしていただければと思います。
以上