長男の妻が父親の面倒をみていた場合に、その分長男が法定相続分以上の財産を相続することができるだろうか

長男の妻が父親の面倒をみていた場合に、その分長男が法定相続分以上の財産を相続することができるだろうか

 

(設問)

   父(長男の父)をその生前10年間にわたり入院先の病院で付添いをしたり自宅で入浴や食事の世話のほか日常の細々とした介護を行っていた場合長男は父の相続財産を相続する場合に、妻の介護分だけ多く相続することができるか。
なお、他に相続人は長男の弟(二男)がおりまた父の遺言はないことを前提にします。

 

(答え)

   介護分が寄与分として認められれば、法定相続分より多く相続できます。一般に寄与分が認められる場合とは、介護を要する状態で、親族の扶養義務の範囲を超えるような形態の介護を行った場合など特別な寄与があったといえる場合でないと原則認められません。
なお東京高裁平成22年9月13日決定は長男の妻が長男の履行補助者として看護や介護をしているという法律構成により長男の寄与分を認定しています。

 

(解説)

寄与分制度の概略(寄与分の主張は相続人に限る。)
寄与分制度は被相続人の事業に関する労務の提供又は財産上の給付被相続人の療養看護その他の方法により被相続人の財産の維持又は増加に「特別の寄与(貢献)」をした相続人に対して遺産の分割に当たって法定又は指定相続分にかかわらず遺産のうちから寄与に相当する額の財産を取得させることによって共同相続人間の公平を図ろうとするものです(民法904条の2第1項)。
寄与の方法としては民法904条の2第1項は「被相続人の事業に関する労務の提供又は財産上の給付被相続人の療養看護その他の方法」を挙げています。
そしてこれらの方法により被相続人の財産の維持又は増加に「特別の寄与(貢献)」をした相続人があるときは①寄与分を金銭的に評価しこれを寄与した相続人に取得させかつ②その評価額を相続財産から控除したものを相続財産とみなしこの「みなし相続財産」を基礎として各相続人の相続分を算定します。寄与の主な方法を挙げると以下のようになります。
    1. 被相続人の事業に関する労務の提供(家業従事型)の例
      相続人が被相続人の事業である農業や自家営業(医師弁護士税理士司法書士等)に無給又はこれに近い状態で従事する場合が挙げられます。

 

    1. 被相続人の事業に関する財産上の給付(金銭等出資型)の例
      相続人が自己の資金を提供して被相続人の事業に関する借金を代位弁済したり被相続人名義で事業用の財産を取得するなどして被相続人の財産の維持又は増加に特別の寄与した場合が挙げられます。

 

  1. 被相続人の療養看護(療養看護型)の例
    被相続人が病気・老齢等の理由により身体的・精神的に看護が必要である場合に特定の相続人が長年その看護に従事したことにより看護費用の支出を免れるなどして被相続人の財産の維持に貢献したような場合が挙げられます。
   本件は、上記2(2)ウの被相続人の療養看護(療養看護型)の問題であり長男の妻の義父に対する介護がどのような場合に長男の寄与分として主張できるかが問題となります。
この点につき裁判例では簡単には「特別の寄与」を認めず一般に親の入院時の世話や通院の付き添いは同居親族の相互扶助の範囲内(親族の扶養義務の範囲内)であるのでこれだけでは足りずこれにより介護費用の支出を免れ財産維持に貢献したと認められる場合でなければ「特別の寄与」があったとはいえないとしています(大阪家裁堺支部審平成18年3月22日家月58巻10号84頁参照)。
特別の寄与を認めた東京高裁平成22年9月13日決定(家月63巻6号82頁)は長男の妻による被相続人の入院中の看護の一部や死亡直前半年間の介護(毎晩失禁の状態)は家政婦などを雇って当たらせることを相当とする事情の下で行われその余の介護も13年余りの長期間にわたって継続して行われたものであって長男の妻による長男の履行補助者としての上記看護や介護は同居の親族の扶養義務の範囲を超えて相続財産の維持に貢献したと評価することができるとして当該療養看護の寄与分として200万円を認定しています(同内容の審判例として東京家審平成12年3月8日家月52巻8号35頁参照)。
本件についてもこのような観点から特別の寄与があったどうか判断されることになりますが一般に介護を要する状態で親族の扶養義務の範囲を超えるような形態の介護を行った場合に初めて特別の寄与があったと判断されるものと考えられます。
なお上記東京高裁平成22年9月13日決定は長男の妻が長男の履行補助者として看護や介護をしているという法律構成により長男の寄与分を認定しています。
ところで寄与分は被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から「遺贈の価額」を控除した額を超えることはできない(民法904条の2第3項)とされていることから被相続人が相続財産の分配方法をすべて遺言で指定しておけば寄与分が機能する余地はないことになりますので、ご注意下さい。